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コラム
Volume
09

相見積りで気をつけたいポイント

ホームページの制作にあたり、相見積りやコンペをすることで提案してもらうことをお考えの方も多いと思います。その際に注意しておきたい点がいくつかありますので、参考にしていただければと思います。

提案依頼書を用意する

相見積りやコンペをするのであれば、簡単でもいいので提案依頼書(RFP = Request For Proposal)を事前に用意しておきたいところです。提案依頼書とは、ホームページ制作会社に目的や要望、要件(仕様)などを伝えるためのものです。
口頭のみの場合、説明する度に内容にズレが生じたり、伝え漏れなどが発生する恐れがあります。提案依頼書を作ることで、そのリスクを軽減し、スムーズなコミュニケーションが図れます

記述しておきたい内容

  • ホームページ制作またはリニューアルの目的
  • 希望の公開日
  • 希望の予算感
  • 事業内容、商品やサービスの詳細
  • 自社の強み
  • 解決したい課題や問題
  • ターゲット層
  • 想定する競合サイト
  • 検討事項、等

ポイント

すべての会社に対して、同じ条件を提示することが大切です。できるだけわかりやすく、可能なところは具体的に、正確な内容になるように心がけましょう。ここで各社に曖昧に伝わってしまうと、「思っていたものと違う」といったことが起きてしまいます。そればかりか、企画や見積りも基準がバラバラになってしまい、比較が難しくなります。
体裁は特に決まりはありませんので、通常のビジネス文書のようにテキストで作成すれば大丈夫です。

予算を予め開示する

制作会社に断られる理由の上位が、予算が合わない、というデータもあります。
予算を伝えずに見積りなどを依頼する企業が少なくありませんが、予算ははじめに伝えておくことをおすすめします
予算を開示しない理由として、「相場がわからない」、「どれくらいかかるか知りたい」、「少しでも安くしたい」といった背景があるのではと想像しますが、そもそも金額が合わないことには契約が成立することはあり得ないわけですから、双方共に手間と時間がムダになります

ポイント

例え相場がわからなかったとしても、出せる金額に上限はあるはずです。「最大○○万円程度まで」といった上限提示でも構いませんので、予算ははっきりと伝えておきましょう。そうすれば予算内でできることを提案をしてくれる可能性が高くなりますし、全く費用感が合わない場合はその旨を伝えてくれるはずですので、速やかに候補から外すことができるという大きなメリットがあります。

相見積りの会社数は絞り込む

相見積りやコンペでありがちなのが、「5社に声をかけています」といったものです。たくさんの制作会社に競争させればよい結果が出るという、誤った認識によるものだと思いますが、2~3社程度にしておくべきです。

理由は、制作会社に断られる可能性が高くなる、比較が難しくなる、といったことが挙げられます。
また、制作会社の立場からすると、例えば5社との相見積りの場合、受注できる確率は単純計算で20%しかありません。6社では16.7%です。赤字になる可能性が高い状態では提案にお金をかけにくいですし、経験豊富で実力のある制作会社はわざわざそこにお金と時間をかける必要性もありませんので、辞退される可能性が高くなります

ポイント

相見積りをとりすぎると、結果的に質を上げたいはずのものが、逆の結果を招くことになりかねません。相見積りやコンペは、2~3社で充分です。たくさん声をかけるよりも、予めホームページなどで下調べして絞り込んでおく方がよい結果を出しやすいでしょう
また、決定した1社を除き、残りのすべての制作会社に断りの連絡を入れなければならないことも考慮しておきましょう。何の連絡もしない会社もありますが、心証が悪いのは間違いありません。

スケジュールに余裕をみておく

提案依頼書(RFP)の作成時間、制作会社への声掛けや日程調整、各社との打ち合わせ、提案が出揃うまでの日数、業者選定の時間など、発注までだけでも相当な時間がかかります。

その後、発注~契約~制作…となりますので、スケジュールが短い状態で相見積りやコンペをしてしまうと、制作期間を圧迫してしまいます。コラム「失敗例に学ぶホームページ制作・よい結果に導く4つのポイント」でも触れていますが、短納期でよいものはできません。どんなに優れた制作会社であっても、時間の短さには勝てません。“納品する”ことが優先事項となり、「思ったような良いものが作れなかった」というような結果になりかねませんので、この点については特に注意してください。

ポイント

スケジュールに余裕がない場合、制作会社に断られる可能性が高くなるでしょう。
提案依頼書(RFP)の作成~業者選定の準備段階で、少なくとも1ヵ月ほどみておいた方がよいでしょう。また、打ち合わせから提案締切までの期間は、短くても10日程度、できれば2週間ほどの期間をみておくとよいでしょう。制作会社もあなたの会社だけに時間を割けるわけではありません。特に顧客のついた人気のある制作会社ほど様々な業務をかかえており、発注側の思い通りのスケジュールで動けない可能性も高くなります。

制作期間も重要です。きちんとしたものを望むなら、最低でも1ヵ月程度~は必要だと思います。あとはホームページ(サイト)の規模(ページ数や内容など)や、求める仕様により変動します。

見積り額だけで判断しない

相見積りやコンペをすれば、競争原理が働いて「少しでも費用を安くできるはず!」、「値下げの圧力もかけやすい」と思っている方もいかもしれません。しかし、実際はそのような単純なものではありません。

まず、実力のある制作会社は無理をしてまで受注しなくても仕事がありますので、金額が合わない場合は見切りをつけられてしまうでしょう。逆に、仕事に困っている制作会社は、質を落としてでも何とか受注したい、という心理が働きます。
つまり、値下げを要求するということは、「自ら質を落としにかかっている」ということを意味します。質が落ちるということは、成果が遠のくということでもあります。

ポイント

いくら提案依頼書(RFP)を作ってある程度の基準を設けても、課題や問題へのアプローチはひとつではありません。制作会社それぞれで異なった提案をされるでしょう。
その際、単純に「安い」という理由だけで選んでしまわないようにしてください。提案がある場合にはその提案内容を、単純な相見積り(価格コンペ)の場合にはその細目を、しっかりと確認することが大切です。また、見積書に細目がほとんどないような制作会社は避けておくのがベターです。

よりよい結果を出す方法

見積りやコンペは無料が当たり前だと思っていませんか?
実はそんなことはありません。提案への対価(コンペフィー)を支払う企業も一定数あります。むしろ、欧米では支払うのが一般的だといわれています。金額だけの相見積りだけならともかく、提案型の場合は特に、制作会社は多くの時間を費やしています(人件費をかけています)。
「なぜ採用もしない(かもしれない)提案に対して費用を払わなければいけないのか」と感じられるかもしれません。しかし、コンペフィーを支払うことには大きなメリットがあるのです。

実力のある制作会社に出会える可能性

上述したように、実力のある制作会社は、あえて受注できないかもしれない案件に参加するメリットがありません。「コンペフィーのないコンペには参加しません」と明記している会社もあるくらいです。そもそもコンペは受注の確度が低いことが多く、成果報酬のみでは制作会社はタダ働きするだけの可能性が高くなります。
また、優れた制作会社ほど、デザインやシステムに対する理解を示してくれる顧客を好む傾向が強くなります
結果、参加してくれる業者は質の低いところばかりになってしまうといったことにもなりかねません。「投資」のはずが、それでは本末転倒です。

提案の質が高くなる

多少コンペフィーが少なくても、それがあることで制作会社としては参加しやすくなります。少しでも優れた会社が参加してくれれば、当然、質も上がります。もし受注できなかったとしても営業費として割り切れる可能性も上がりますので、制作会社側のモチベーションも上がり、必然的に提案に力を入れてくれることでしょう。

まとめ

相見積りやコンペを、単に費用を安くする手段と考えるのは誤りです。家電のように同じ型番をいくらで買えるか、というのとは意味が違います。ホームページは、(例え格安サービスであっても)三者三様です。費用だけで選んでしまうのは一番よくありません

選定の基準をはっきりさせておく

本当に必要なものは何か、課題を解決してくれそうか、将来に渡って気持ちよく付きあえそうか、など全体を俯瞰して判断する必要があります。
いくつか選定の指標となる要素をご紹介しますので、参考にしてください。

  • 課題を理解しようとしているか(言いなりではないか)
  • コンセプトやコンテンツなどを一緒に考えてくれるか
  • デザインの品質がしっかりしているか
  • セキュリティ対策はしっかりしているか
  • 担当者のレスポンスは早いか

モラルはしっかり守る

費用を出す以上、発注者が選定を行なうのは当然です。しかし、取引である以上は対等の関係です。お互い気持ちよく仕事ができるように、モラルを守ることも大切です。
転職も多く、意外に狭い業界ですので、モラルが悪いと伝わりやすいものです。私も、とある筋からある企業のモラルの低さを教えてもらったことがあり、絶対に関わらないようにしようと心に誓ったことがあります。
現時点では断りを入れた制作会社であっても、もしかすると選定した業者と馬が合わずに他社に乗り換えることになるかもしれません。悪い噂が立ってしまうと、その時に苦労することにもなりかねません。