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コラム
Volume
08

謳い文句や特典に惑わされない─本質を見抜く制作会社選び10選

数多ある制作会社。料金もピンキリで、何を基準に選べばよいのか迷う方は少なくありません。価格や“特典”だけで判断してしまうと、契約や仕様の裏側に潜む仕組みを見落とし、後で身動きが取れなくなることもあります。ここでは、表面的な魅力に惑わされず、信頼できるパートナーを選ぶために最低限おさえておきたい10の視点をまとめました。

初期費用0円は本当にお得?

「初期費用0円」や「数万円で制作可能」というプランは、思わず飛びついてしまいそうなキャッチコピーですが、長期の月額料金やリース契約で制作費を回収する場合があります。同様に「月額利用料 ○万円」というのも危険です。

総額が想定より高額になり、途中解約しても返金がない、解約と同時にサイトが削除されるなどの条件もあります。契約前に、契約期間・解約条件・総額・費用の内訳(制作費、保守費、サーバー費など)を必ず確認しましょう。単に安さだけでなく、出口まで含めたコスト構造(契約満了や解約までを含めた総費用)を比較することが大切です。

初期費用(イニシャルコスト)の工面が難しいからと安易に契約してしまうと、あとあと問題に発展するリスクをはらんでいます。コラム「思うほど安くない格安ホームページ制作」で詳しくご紹介していますので、気になる方はぜひご一読ください。

スピードの代償とは─省かれる工程とその影響

あまりに短期間で納品できる、という制作会社も注意した方がいいでしょう。「最短2週間」など短納期を売りにする場合、多くはテンプレートへの流し込みで成立しています。見た目はオリジナル感があっても、基本は型に流し込んでいるだけです。
通常であれば、小さなサイトでも、どんなに急いでも1ヵ月程度、きちんと分析や企画をする場合やページ数がある程度あるような場合には数ヶ月程度かかるものです。短納期の場合、十分なヒアリングや設計などの工程が省かれがちです。これらは一見地味ですが、訪問者の理解や信頼、行動を促すためには不可欠な要素です。

設計不足のまま制作すると、導線が不十分でお問い合わせや購入につながらなかったり、更新しづらい、スマホでの表示や操作性に問題がある──こうした課題が後から浮上します。さらに、検索エンジンからの評価を高めるための基本的な内部施策や、改善余地なども置き去りにされがちです。その結果、集客やコンバージョンの伸び悩みだけでなく、再構築や追加改修で余計なコストと時間がかかることになりかねません。

便利そうな独自システムに潜む落とし穴

独自管理画面は、もしかすると見た目や使い勝手がよく、導入当初は魅力的に感じられるかもしれません。
しかし、こうした独自システムは多くの場合、その制作会社の環境や仕様に依存しており、他社への移行や機能拡張が極めて困難になることがあります。データの保存形式が独自仕様だったり、エクスポートが制限されていたりすると、将来的な再利用ができません。

さらに、契約や運用の主導権を制作会社が握り続けることで、更新や修正のたびに費用や時間がかかったり、自由度が大きく制限される可能性があります。場合によっては、サーバー契約や保守サービスと抱き合わせになっており、移行や解約時に高額な費用が発生するケースもあります

決しておすすめはしませんが、もし契約するのであれば、契約前にデータのエクスポート方法や互換性、移行時の条件や費用を確認してください。WordPressなどの標準的なCMSの場合でも、テーマやプラグインの更新方針、セキュリティ対応の体制まで明確にしておくことが重要です。

サーバーの抱き合わせにも注意

制作会社が契約主体となり、サーバーや保守サービスを抱き合わせで提供していると、移行や解約時に不利な条件が付くことがあります。再販型のサーバーを利用している場合、他サイトと同じサーバー環境で動くため、速度や安定性に影響することもあります。さらに、サーバーの管理権限を制作会社が握っていると、万が一のトラブル時にデータを自由に取り出せない可能性もあります。

契約前には、移転の可否やサーバーのFTP権限が自分に付与されるか、データの取り出し方法、バックアップの頻度と保存場所などを確認しましょう。これらが不十分だと、将来的に業者を変えたい時やトラブル時に、必要なデータが取り出せず大きな不利益を被る可能性があります。また、可能であればサーバー契約は自社名義で行い、後からサーバー事業者を変更できるようにしておくと安心です。

デザイン選びは自己満足、大切なのは設計

豊富なデザイン選択肢は魅力的に見えますが、テンプレートをベースに色や写真を変えるだけでは独自性や訴求力は限定的です。情報設計やコンテンツ戦略が不十分だと、見た目はそれっぽく整っていても成果につながらないサイトになります
誰に、何を、どのように伝えるのかという設計が欠けていると、訪問者は必要な情報にたどり着けず、離脱率が高くなることもあります。契約前に、ブランドやターゲットに合わせた構造や機能を提案してくれるかを確認しましょう。テンプレート活用は必ずしも悪いことではありませんが、それを超えた工夫や差別化の姿勢があるかが鍵となります。ただし、細かく思い通りのデザインにしてもらうことはできない、または有料オプションとなることが多いようです。

テンプレートの色味を変えたり写真を差替えるだけにもかかわらず、「オリジナルデザイン」と謳っている会社も少なくありませんので、但し書きや実績などを注意深く確認しましょう

制作件数より、成果の質と姿勢に注目

一般的なWeb制作、つまりオーダーメイドで制作している会社であれば、10年程度で数千件、などということはありえません。
実績数が多いことは経験の裏付けにもなりますが、それだけで質や成果を判断するのは危険です。短期間で大量制作している場合、テンプレート大量生産や外部の業者に丸投げという可能性が高いでしょう。実績を確認する際は、掲載された事例の背景や制作の目的、成果指標(アクセス数、問い合わせ増加など)も見ておきましょう。加えて、公開後の改善や提案が継続的に行われているかを聞くことで、その会社の姿勢や顧客への向き合い方が見えてきます。

「とりあえず名刺代わりにほしいだけ」というような場合はそれでもよいかもしれません。ただ、通常は企業としての目的があるでしょうし、事業成長の足がかりとしたいなど将来的なことを視野に入れるのであれば、避けておきたいところです。

無料サービスで釣っていないか?

Googleビジネスプロフィール登録やSSL化など、無料で利用できるサービスを「無料特典」として強調する例は少なくありません。当然、登録などの作業は必要ですが、自分で行なえば0円です。分かりにくいこともあり、代行されることも多いとは思いますが、せいぜい2~3万円といったところでしょうか。相場があるわけではありませんが、手続きなどの所要時間を考えるとそう高いものではありません。
ロゴ作成無料も同様で、普通に考えて品質や独自性は低いでしょう。真剣にロゴデザインを考案するのであれば、そのような簡単なものではありません。もし無料や無料に近いような費用でできるとしたら、適当なパーツを組み合せたようないい加減なものか、別のところで費用が回収されているかのどちらかと言っていいでしょう。安易に作ったロゴでは、ユーザーの信頼を下げることはできても、信頼を獲得することは極めて困難でしょう

必ずしも無料であることが問題ではないかもしれませんが、重要なのはその内容や価値です。契約前に、それらの“無料”が本当に自社の目的達成に役立つのかを見極めましょう

ドメインや契約に“出口の罠”がないか

ドメイン移管を拒否したり、高額な移管費用を請求する事業者も存在します。契約前に、ドメインの所有者情報が自社になっているか、移管の条件や手続き、費用を明確にしておきましょう。出口条件を確認せずに契約すると、後から自由に運用できなくなるリスクがあります。

ドメインの移管に何万円もかかることはありません。自分で行なえば数千円、制作会社に依頼してもせいぜい2~3万円でできることだと思います。

そもそもドメインは移管しなくても、DNS設定を変更するだけで新しいサーバーで利用できます。それにもかかわらず、サイトの契約時に「必ず移管が必要」とするケースには疑問が残ります
また実際に、残念なことに他社へ乗り換えようとした際に手続きを渋る業者も存在します。

当たり前の技術を特典化していないか

時SSL化やレスポンシブ対応は、今やホームページ制作の標準仕様です

SSL化は通信を暗号化し、ユーザー情報や入力内容を安全に守るためにもはや不可欠です。対応していないサイトはブラウザに「安全ではない」と表示され、訪問者の不安を招き、検索順位にも悪影響が及びます。

また、レスポンシブ対応はスマホやタブレットなど、さまざまな画面サイズに合わせて最適表示を行う仕組みで、現在では半分以上のアクセスがモバイル端末から、というのも珍しくありません。これらは追加費用を取る特別サービスではなく、初期制作の時点で備わっていて当然の要素です(ただ、昔PCだけに対応すればよかった頃と比較すると、当然コストは上がります)。

それにもかかわらず、あえて「特典」として強調している場合、他にアピールできる差別化要素がない、あるいは標準仕様にすべき項目を有料オプション扱いしている可能性があります。契約前に見積りや仕様書で、何が標準対応で何がオプションなのかを明確にし、本当に価値のある追加機能に予算を配分することが大切です

長く任せられる制作パートナーか

Webサイトは公開して終わりではなく、更新や改善を重ねて成果を育てるものです。アクセス解析を行い、訪問者の行動データをもとに改善点を見つけ、コンテンツ追加や機能改修を重ねていく必要があります。これらは短期契約や単発制作では難しく、長期的に関係を築ける相手だからこそ可能です

また、柔軟に対応できるか、連絡や相談がスムーズにできる体制があるかも重要です。トラブルや急な変更が発生した際に、誠実に対応してくれる相手かどうかが、安心して任せられるかの判断基準になります。

料金や納期条件だけでなく、将来的に相談や依頼を続けられる関係を築けるかが、長期的な成功の鍵となります。

まとめ

「あれも無料」「最短納品」「実績多数」──こうした言葉の裏には、長期的な制約や品質低下のリスクが潜むことが多々あります。目先の安さにとらわれがちですが、このような制作会社は避けておくのがベターでしょう。

すべての格安業者が悪いわけではないと思いますが、多くの問題をはらんでいる業者が多いのも事実です。もしこのような業者を選ばれる場合は、「但し書き」や契約書などをすみずみまで熟読し、よく理解した上で契約してください。

Webサイトは短期の消耗品ではなく、長く育てる資産です。契約内容や条件を細部まで確認し、自社の価値を正しく届けられる信頼できるパートナーを選びましょう。いい加減な制作会社を選んでしまうと、いつまでも引きずられることになってしまいます